全ての称賛はアッラーにあれ。アッラーの使徒ムハンマドさまに祝福と平安あれ。

　イスラームは、世界で最も信徒人口の増加率が大きい宗教と言われています。

　それは単に出生率が高いというだけではなく、世界各地で改宗者の数も未だ成長し続けていることにもよります。それはこの日本でも同様です。

　そして時々、イスラーム改宗者が自問するのがこのような質問です。

　「イスラーム以前にやってしまった悪いことは、どうなるんだろう？」

　基本的に、改宗以前にやってしまった悪いこと、イスラームの教えに反することは、改宗後によいムスリムとなることでクリーンアップされます。

預言者ムハンマド（彼にアッラーからの祝福と平安あれ）は、イスラームの受容を決心したアムル・ブン・アル＝アースに、こう言っています：「あなたはイスラームが、過去の罪を抹消することを知らないのですか？」（ムスリムの真正集）

　それだけではありません。イスラーム改宗以前の善行も、善行の秤にかけられることになります。ハキーム・ブン・ヒザームはある時、アッラーの使徒（彼にアッラーからの祝福と平安あれ）にこう言いました：「あなたは（イスラーム以前の）無明時代に、私が勤めた善行を御覧になったかと思います。果たしてそれらは、私の役に立つのでしょうか？」アッラーの使徒（彼にアッラーからの祝福と平安あれ）は言いました：「あなたは、あなたが以前行っていた善行を携えてムスリムとなったのです。」（二大真正集）

では、イスラームに改宗した者は、これらの伝承に基づいて、改宗前に犯してしまった罪は帳消しになったものと安心してよいものでしょうか？

「安心してよい」と言うことはできます。ただし、「よきムスリムでありたい」という気持ちと共に、与えられた環境の中で努力する限りにおいてです。

また、「安心してはいけない」と言うことも可能です。というのも過去の罪のことはともかく、永遠の来世での成功はその後の自分の努力次第だからです。

預言者（彼にアッラーからの祝福と平安あれ）は言いました：「イスラームの教えによく則った者は、（イスラーム以前の）無明時代に彼が犯した物事について問われない。しかしイスラームの教えによく則らない者は、（彼のイスラーム改宗）以前と以後に犯した物事について問われることになるのです。」（二大真正集）

　つまり、単にイスラームに改宗しても、イスラームの教えに則って自らを正すことがない場合、逆に改宗以前及び以後の罪を問われることになります。

罪やあやまちから完全に無縁な人などはいません。しかし問われるのは、罪をいかに抑える努力をするか、そして犯してしまった罪にどのように対処するかです。信仰者は心身に錆や汚れが付着しないように普段から心がけ、かつ日常的にその洗浄に努めるものです。預言者（彼にアッラーからの祝福と平安あれ）は言っています：「全てのアーダムの子は罪を犯してしまうもの。しかし罪を犯す者の内でも最善の者が、（罪を悔やんで）頻繁にアッラーへと立ち返る者なのです。」（アッ＝ティルミズィーのスナン集）

過去の罪に悩む者がすべきことは、同じ過ちに立ち返らないことです。そしてむしろ、今生きている現在において、より多くアッラーへと立ち返ることなのです。

過去の罪や悪い経験に押しつぶされる必要はありません。むしろそのような経験を逆手に取り、不信仰や罪の恐ろしさを実感し、信仰と導きのありがたさを実感する手段とすべきです。そのような者はもしかするとそのような経験があるからこそ、罪や不信仰にまみれた人生の辛さやイスラームのありがたさを実感し、その結果よりよい信仰者になれるかもしれないのです。

預言者（彼にアッラーからの祝福と平安あれ）は言っています：「以下の3つのことが揃っている者は、信仰の甘美さを見出します：アッラーとその使徒が他のいかなるものよりも愛すべき存在であること。アッラーゆえにしか人を愛さないこと。一旦そこからアッラーによって救い出された後、地獄に投げ入れられるのを嫌うように、不信仰に戻ることを嫌うこと。」（ムスリムの真正集）

イスラームの教えに則って自分自身を正すことには、イスラームに対する誠実かつ真摯な気持ちが大前提としてありますが、その後もそれなりの学習と時間が必要となります。ムスリムとして生まれた者も、自ら改宗した者も皆、アッラーの教えに真摯で忠実なしもべとなれますよう。

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